幼い頃、台所に自分の居場所がなかったという。
率直に開襟で話してくださるインタビュイーがいるからこそ
『東京の台所』という連載は成立しているのだと、とりわけ強く実感した回である。
「34年間料理経験ゼロ。意外な方法で苦手意識を克服」
(『東京の台所2』朝日新聞デジタル&w)
定点観測を終えて
雑誌や書籍など通常の取材では、
ついあらかじめ一番絵になるところを決め、
一人でも多くの人を惹きつけそうなテーマを据えて、きれいにまとめがちだ。
しかし、 この連載は違った。
「かぞくの定点観測を終えて」
※媒体の休刊に伴い、「令和・かぞくの肖像」最終回に。
お読みくださった方々、そして
4年間、取材に惜しみない協力をしてくださった4組の「かぞく」のみなさま
本当にありがとうございました。
写真 笠井爾示
文 大平一枝
編集 落合真林子(OIL MAGAZINE by CLASKA)
偏りも性質
「家事も子育ても、
自分のやる気次第で際限ないですし、
誰にも評価されない苦しさが
ずっとあった」
糖尿病の父と祖母。ふたりの死。
子どもや夫の、食の癖と偏り。
3子をほぼワンオペで育てた
彼女の台所の今。
「どんなに気をつけても偏食をする家族と暮らしながら」(朝日新聞デジタルマガジン&w)
寒くてもビールは飲む
過日の記。
雨具も着ない応援団の姿と音よ。
セ・リーグ最終戦、サヨナラ負けに「優勝してるし、どっちでもええねん」と負け惜しみを言う家人の小ささよ。
彼女の考え事の場所
台所で考えるのは、子どものことばかり。
「ちょっと時間があると、受験やら学費やら。
次々と心配の種が浮かんできちゃって。
自分のことを考える余裕がありませんでした」
『東京の台所 2』
「やっと考えられるようになった彼女の新しい道とは。
「54歳で美大に入学。台所で考える自分の人生」
(朝日新聞デジタルマガジン&w )
文:大平一枝
写真:本城直季