朝日新聞デジタル 連載『東京の台所』更新です。夢を追いかける青年の台所です。
桝野俊明さん
お会いするたびに、心の奧深い所に届く言葉や気づきが必ずある。ふだんは湖の底に眠っているが、これは困った!とか、どうしたもんかなあと迷いかけていたふとした瞬間に、その言葉がぼこぼこと湖面に出てきて、大切なヒントと気づかされる・・・。
そんななので、禅僧であり、作庭家でもある桝野俊明さんの取材は、いつも仕事以上に、自分の人生のヒントをもらいに行くような気持ちになってしまい、もれなく前のめりになってしまう。
今回もまた前のめりのまま、文章構成のお手伝いをさせていただいた桝野さんの著書『書いて体得する禅 すっきり爽やかな心をつくる』(メディアファクトリー)が発売された。
禅語を書きながら、心を整える修行本である。
風が吹きぬける部屋
朝日新聞デジタル『東京の台所』で、初めて読者の方の家を訪ねた。暑いのに、三方向の窓から風が入る、何とも居心地のいいマンションの1室だった。帰り道、「駅までの道はつまらないから」と、遠回りだけど面白い谷中の路地を案内してくれた。1本の路地に、現役の井戸が二つもあった。ああ、住みたい・・・。これだから、谷中と高円寺はなるべく近寄らないようにしていたのだ。行ったらきっと迷宮のようにはまって、どうしようもなく住みたくなる気がするからだ。ほんの少しだけ、下北沢と似た匂いがすると思うのは私だけか。
その人の煎れてくれた麦茶がめちゃくちゃおいしくて4杯おかわりしたら、最後に「あの、これ持っていって下さい、私はいつでも買えますから」と、輪ゴムで縛った残りを袋ごとを全部下さった。コツは、沸騰したらすぐ火を止めることと、ティーバッグに入っていない昔ながらの粒のままを買うことだそう。それにしても人んちでおかわりしすぎだ。申し訳なさ過ぎだ。
記事『巣作り上手が見つけた仮の家』。