

『ただしい暮らし、なんてなかった。』(平凡社)
文 大平一枝
撮影 安部まゆみ
装丁 佐々木暁
編集 吉田真美、野崎真鳥(平凡社)
モノの選びかたや手放しかた、家事のルーティーン、日々の人付き合い、心身のケア、住まいの手入れ……。慣れない子育てや仕事に奔走していた10年前から、ふと気づけばいろいろなことが変化していた。トライアンドエラーをくりかえしてつかんだ、「ちょうどいい暮らし」のヒントに満ちたエッセイ集。
――みんな、生きている途中だ。自分にフィットする暮らしのありようを求めて石のようにどんどん転がっていけばいいと思う。変わることをとめずに。(本書より)
【制作こぼれ話】
既刊『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)の担当編集者から 「第二弾を作りましょう」とお声がけいただいたことから始まった。
ちょうど10年を経て子どもたちはすだち、家族のあり方も、ライフスタイルも、仕事のしかたも、価値観も変わった。 もちろんコロナ禍も切り離しては考えられない。 ではどうかわったか、が本書制作の起点となった。
過去25冊で初めて、書く前に装丁家と打ち合わせをした。そしてコンセプトづくりのところから装丁家に入ってもらった。 私や編集者は、生活のアイデアや実用書ではなく、暮らすことでたくさんのトライアンドエラーを重ねてきた今 見えてきたこと、考えの柱を記す本にしたいと考えていた。
装丁家の佐々木暁さんは、「では、考え方を伝える本ですね」と即座に理解され 文中にインテリア写真を入れたり、カバーに暮らしの写真を持ってくるのはやめましょうと提案。 写真は、「変化」をテーマにした抽象的なものにと、斬新なアイデアを出してくださった。
また、人付き合い、自分のケアなど具体的に一つ一つ、下記2点をエッセイごとにいれることになったのも この時の打ち合わせで決まった。
・「かつて」はどんな考えだったか。
・「いま」はどうどう考えているか。
タイトルは3人の編集者で(吉田さんは途中で産休に)出しあい、数十本の中から決めた。
表紙は潔く文字だけ。原稿を書く前にカバーが出来上がっていたのも初めての経験だ。
執筆中何度も、迷いそうになるとカバー写真を眺めた。
すると原点に戻れて、ブレも修正できた。
ブックデザインが本づくりに及ぼす素晴らしい影響を実感した。
またひとつ、忘れがたい作品が生まれた。
この世の中は、頑張ることより頑張らないことのほうがずっと難しい。 少し減速して、自分ファーストで、もうそんなにスケジュールもモノもつめこまずに ゆっくりいきましょう。 そんなことが一人でも多くの人に伝わることをせつに願っている。
