

『届かなかった手紙 〜原爆開発「マンハッタン計画」科学者たちの叫び〜(角川書店)』
文・写真 大平一枝
装丁 松田行正・杉本聖士
編集 菊地悟(角川書店)
〜原子爆弾開発のきっかけを作った科学者は無警告使用中止の手紙を送っていた〜
原爆を開発したマンハッタン計画には3千人の科学者・技術者がいたと言われる。
そのうち70名が「ヒロシマにげんばくを無警告で落としてはならない」と
投下の3週間前に、トルーマン大統領に署名を送っていた。
私は、アメリカに渡り、最後の署名科学者とその家族、同僚に取材を重ねた。
説明責任のために取材に応える科学者。
やりきれない思いを抱えて路頭に迷う自分。
その旅の顛末と歴史に埋もれたひとりのユダヤ人科学者の生涯をおった。
「いま、シラードを知っているアメリカ人はほとんどいない」――。
巨大な爆弾製造の可能性を予見し、「ナチスに対抗するために、アメリカでも原子力爆弾の研究が必要です」とアインシュタインに手紙を書かせたハンガリー生まれのユダヤ系物理学者、レオ・シラード。彼は原爆投下の直前、トルーマン大統領宛に、無警告使用に反対する七〇名の科学者の署名を集めた。製造をたきつけておきながら、なぜ使用を止めようとしたのか。そんな人物がなぜ歴史から葬られているのか。署名はその後どうなったのか。
本書ではシラードの請願書に署名した科学者をはじめ、彼を知る人物を中心に直接取材を実施。彼の名が消えた理由、そして、総費用二兆円、関わった労働者11万人余と言われるマンハッタン計画の本質とは。それは、すなわち原爆とはなんであったかという問の答えでもあった。
<目次>
序文
第一章 突然の、旅の始まり
第二章 ユダヤ系科学者とマンハッタン計画の濃密
第三章 予知する天才科学者の光と影
第四章 消された声
第五章 署名科学者の、あのときから今日まで
第六章 現代の“シラード”たち
第七章 旅の終わり、ヒロシマ
跋文
