『信州おばあちゃんのおいしいお茶うけ ~漬け物から干し菓子まで、信州全土の保存食110品~』

『信州おばあちゃんのおいしいお茶うけ~漬け物から干し菓子まで、
信州全土の保存食110品~』(誠文堂新光社)

著  大平一枝 
装幀 斉藤いづみ
写真 安部まゆみ
編集 至田玲子 

テレビや雑誌に載らない、ご近所さんだけが認める「お茶うけの達人」を訪ね歩いた。
お茶うけには、野菜や果実。山菜や木の実という旬の恵みを保存して1年中楽しむための知恵と工夫がたくさんつまっている。
そこに流れるゆたかな時間のかけらを生活の中に取り入れてもらえたら本望である。

【制作こぼれ話】
春夏秋冬、長野に通った。
スタッフ3人、実家に泊まり込んで何十品も撮ったり
長野にUターンした学生時代の仲間にも登場してもらったり助けてもらった。
18歳まで長野県内5カ所に住んだ私としては
故郷を俯瞰しひとつ、人生の区切りが付いたようなおももちでいる。

一般の方にレシピの分量を聞くのは無理だろうと
はんぶんあきらめそうになっていたことも
「やりましょう」と編集の至田さんが最後まであきらめなかった。
結果、想像していたものをはるかに上回る中味の濃い1冊になった。
最後まであきらめないこと、
粘り強くものづくりをすることの大事さと醍醐味を学んだ。

安部まゆみの車に乗り
わあわあサーカス団のように町から町へと移動した。
最後の取材が終わったとき
「このスタッフとの旅がもう終わりというのが1番寂しい」と至田さんは言った。
皆同じ気持ちだ。

すべて撮り下ろし。
もうこんなに丁寧に手間暇かけた書籍づくりはできないんじゃないかとさえ思う。
気持ちはあっても、そんな幸福な条件と環境が揃うことはそうはあるまい。

本作りというひとつの祭りが終わり少しの淋しさと、やりきった充実感に包まれてぼーっとしている。これはいつものことでだから、本作りは麻薬のように楽しいのである。