『世界でたったひとつのわが家』

『世界でたったひとつのわが家』(講談社)

装丁・ブックデザイン 坂川栄治・田中久子(坂川事務所)
イラスト 牧野伊三夫
編集 篠原由紀子

傘立てのスペース、パソコンのコードの束、
物干し竿の高さ・・・
そういうささいな暮らしの隅っこに、
案外、快適の「核心」が
潜んでいたりするのではあるまいか。
~はじめにより~

【執筆こぼれ話】
11年続いたアサヒコム『小さな家の生活日記』連載を大幅に加筆修正したもの。
「本に」とご連絡をいただいてから、1年7ヶ月がかかった。
いわゆる「実用」と「エッセイ」のはざまで、編集者も私も揺れに揺れた。

建築家や収納カウンセラーや住宅雑誌が言ってくれなかった、
生活目線での「家作り」のツボとコツを書いた。
住んでみたら、パソコンコードのたこ足配線は今にも出火しそうだし、
ほんの少しの予算を削ったばかりに、お香を置く場所がなく、床に置いている。
ちょっとした無意味な棚があればよかったなあ、
床暖房の敷設スペースはもっと考えればよかったなあなど、
これから家を建てる人に役立つような私の失敗も書いてみた。
そして、家という箱を作ることは、
これからの人生を考えることなのだなあということや、
ご近所さんとのつき合いの愉しみについてもまとめた。

書き下ろしよりはるかにしんどかったというのが本音である。
牧野さんの絵が、私の拙い文章を支えてくださった。
帯や見返しのコピーを編集者と一緒に一言一句、納得しあいながら作った。
編集者と併走している感が心地よかった。