『ジャンク・ウエア』

『ジャンク・ウエア』(平凡社)

共著 ふたつ星文庫(大平一枝、さとうあとり)
装丁 熊谷智子
写真 中川彰、川村法子
編集 清水壽明

パイレックス、ヘーゼル・アトラス、フェデラル・グラスのガラスウエアを
「生活者の目線」で紹介。
ファイヤーキングの陰に隠れたこのかわいい器達に、
日の目を当ててあげたいという一心で、編集・執筆した。
使ってこそ楽しいアメリカンジャンクの魅力が伝われば幸いである。

【本書あとがきより】
この本を作りながら、タイムマシンに乗って、
20世紀をひとっ飛びしてきたような気がする。
家の明かりが温かく輝いていた、夢一杯の生活史。
アメリカン・ジャンクはそんな時代のシンボルだ。

あるモノを見た瞬間、なぜか引き付けられる。ノスタルジーが胸の奥で
小さな炎をちらつかせる感じ。
忘れていた過去の小さな思い出が、ふいに脳裏に浮かび上がる。
アメリカンコレクタブルズの器は、
丈夫で安くてキレイで夢がある、大衆食器だった。
20世紀、大衆の暮らしがこれからどんどん豊かになるという夢にあふれていた頃に、
一般大衆の生活を、おしなべて豊かにするために生まれてきたものたち。
だから、どの家にもあった。
おばあちゃんも、お母さんも、隣のおばちゃんも、みんな持っていた。
新しいモデルが生まれると、ありふれたモノたちは輝きを失い、
倉庫の奥にしまいこまれる。
それが今、ガレージセールやフリーマーケット、アンティークモールの一角で
再会する、パイレックスやその仲間達だ。

毎日汚して、洗ってまた使われてきたものたち。
バックスタンプがすり減り、表面に小さな傷をのこしたこの器たちは、
使いしてのモノなんかとは全く
違う精神から生まれてきた商品だ。
だから今もこんなに沢山残っているし、ちゃんと使える。
何より、アメリカが輝いていた時代の夢と希望がたくさん詰まっている。