夢が叶った日

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嫁入り道具で買って以来、ずっと白い色に変えたいと思っていた食器棚を、引越の手伝いにやってきた安部巨匠に塗り直してもらった。そんな面倒な大仕事は嫌だ、前の引越でも断ったじゃんと拒否する巨匠の手には、「マイはけ」が握られ、オウムのサティアンにいた人のようなペンキ用ユニフォームを持参していた。丸1日かかってアイボリーに仕上げてくださった。
頭にペンキを付けながら、棚の下に潜り込んでぬる巨匠。とっぷり日が暮れ、最後にシールはがしに失敗した寝室の壁まで塗り直し、「じゃあ。明後日また手伝いに行くから」と言い残して去るその後ろ姿が、高倉健のように男らしくて、りりしくて、私は思わず財布をひっつかみ、その足で酒屋に駆け込み「あ、あしたできるだけ早くあの男に、いやあの女に、このエビスを届けてくださいっ」と兄ちゃんに頼み込んだ。念願の白い食器棚を眺めながら、私も酒を飲んだ。しびれるように旨い酒であった。