「ロバのシルベスターとまほうのこいし」
★★★★
ウィリアム・スタイグ作 せたていじ訳 評論社
1975年

海より深い親子の絆を
ロバの親子が教えてくれます。
こういう時代にこそ
読み継ぎたい作品!


 瀬田貞二さんの訳がまたしても見事。この人の訳なら間違いないというのに、作者は巨匠ウィリアム・スタイグ。文句の言いようのないコンビだと思います。
 主人公は、子どものロバのシルベスター。彼は、それに触れて何かを願うと現実になるという魔法の小石を見つけます。しかしあやまって、魔法の小石のせいで彼は岩になってしまいます。息子の行方がわからなくなったとうさんロバとかあさんロバは血眼になって探し、悲嘆にくれます…。
 親の愛情とはここまで深いものなのかと、きっと大人が読んでも自分の親を思い出して胸がいっぱいになることでしょう。メッセージはシンプルだけれど、心の深いところにしみじみとつたわってきます。
 最後の場面で、かあさんロバに抱かれたシルベスターの目に一滴の涙が光っています。心が疲れているときなどは、その一滴の涙を見ただけでもらい泣きしそうになることも…。
 ウィリアム・スタイグのあたたかな目線がすみずみまで注がれたこういう作品こそ、次代に読み継がれるべき。みんなが小さいときにこの本を読んでいたら、新聞に載るような大小さまざまな親子の悲しい事件は、少しは減るのではと本気で考えたりしています──。

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