「あかいふうせん」
★★★

イエラ・マリ作
 ほるぷ出版
1976年

字のない小宇宙で
自由に遊ぶ


イタリアのグラフィックデザイナー、イエラ・マリの作品。
字がない絵本で、考えながら読むので、正直に言えば、読む方はちょっぴり疲れます。そう、字のない絵本は、ふだん使ってない部分の脳を使うような感じがして疲れるので、ものぐさな私は苦手なのです。こんな自分は、絵本好きの風上にも置けない奴だと情けない限りなのですが。
しかし本書は、その疲れと比較してあまりある、絵の美しさ、展開の斬新さ、大胆な構図で、毎回心を動かされます。これぞグラフィックデザインの威力と、頭をひれ伏したくなるほどです。
そして、もっと感動するのは、読むたびに子どもが絵から、新しい何かを発見をしてくれることです。
「あ、こんなところにアリンコがいる!」
「蜘蛛の巣がはってるよ」
「りんごがおいしくなったから、地面に落ちたくなったんだね」
ストーリーを考えることに必死になっていた私は、絵を見ているようでちっともみていなかったことに気付かされます。
子どもは、ストーリーに関係なく、紙面いっぱいに広がる絵を、五感全部をつかって、すみずみまで味わっているよう。私なんかより子どもの方がずっと、この本を「知って」いるかもしれません。
私は、この本を見ると、自分の視野がいかに狭いか、そして常識や枠にとらわれて物事を見つめているか。想像力の貧しさを思い知らされます。
どうぞ、つまらない既成概念をうち捨てて、赤い風船が赤い傘に変わるまでの世界を、自分の想像力と向き合いながら、破天荒に楽しんでください。

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